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日系企業トップに聞く 新たな日豪関係

 

経済関係はもちろん外交・防衛面でも二国間の同盟関係を強固にする日豪両国だが、新しい時代を迎えている日豪関係について、日系企業としての活動内容と現状、今後のビジネス戦略、そして新たな日豪関係に期待することなどを、長年にわたってオーストラリアで事業展開するオーストラリア三菱商事会社取締役副社長・シドニー支店長の廣田信治氏に聞いた。

 

オーストラリアでの事業内容

オーストラリア三菱商事は1956年に設立、2016年に60周年を迎えます。三菱商事は世界90カ国に200以上の拠点を有し、600社を超える連結対象会社を有しております。

オーストラリアは、当社のグローバルネットワークの中でもアジアに近く、人口増加率が相対的に高く経済基盤も堅調で、かつ資源に富んでおり、戦略的にも非常に重要な国です。オーストラリアでは三菱商事グループ25社を通じて、LNG、原料炭、一般炭、アルミなどの資源事業、水などの社会インフラ事業、穀物などの食糧事業、乳製品などの食品、化学品、鉄鋼製品、自動車などの幅広い事業・品目を対象に事業投資、トレーディングを展開しています。

資源関連の事業投資は、中国経済などの影響で市況が低迷し厳しい事業環境ですが、徹底したコスト削減や生産性向上への取り組みを通じて、顧客への安定供給を果たすべく長期的視野をもって取り組んでいます。このような取り組みもオーストラリア政府から評価され、弊社会長の小島は、2015年4月に名誉勲章を受章しました。

 

企業のCSR活動について

三菱商事グループは、企業理念として長年受け継がれてきた「三綱領」の精神に則り、社会への貢献、地球環境への配慮、グローバルな事業活動を通じて社会の持続可能な発展や成長を実現することで、「継続的企業価値の創出」を目指しています。CSR活動はこの方針の下で最重要課題のひとつとして認識されており、東日本大震災復興支援、「気候変動への対応」、「生物多様性の保全」、「資源の持続可能な利用」などへの貢献を目的とした各種プロジェクトに世界各地で積極的に取り組んできています。

オーストラリアでも、グレートバリアリーフでのサンゴ礁保全活動や芸術文化支援、新規イノベーションに関するビジネスコンテストの協賛、先住民の子どもたちの読み書き能力の向上支援を含め、様々な角度からCSR活動に取り組んでいます。

 

社員研修で力を入れている点

グローバルに事業展開をしていくうえで多様性・ダイバーシティーの重視とともに、会社の経営層からスタッフ層にいたるまでの価値観の共有が極めて重要であると考えています。

三菱商事の理念である「三綱領」の精神や経営方針などを一人一人に丁寧に説明し、それぞれからの意見を真摯に聞くことで、その浸透を図っています。今後グローバル化の更なる進展とともに、経営・事業の革新はそのスピードをあげていくことが必要になります。そのような中で会社としての競争力を高めていくためには、多様性の重視と価値観の共有を大前提としつつ、各社員個人レベルでの仕事に対する責任感と専門性、自由な発想力と迅速な判断力といったスキルの向上が必須です。これらに直接的、間接的に資する研修を行なうことが重要であると考えています。

 

TPPの締結に期待すること

TPP(環太平洋経済連携協定)の大きな意義は、物品関税の自由化による「自由貿易の促進」に加え、知的財産、電子商取引、国有企業等幅広い分野で21世紀の世界のスタンダードとなる「国際通商ルールの構築」を行ったところにあります。世界のGDPの約40%を占める地域を対象とするTPPが発効されれば、ビジネス環境全般にとって大いに追い風になると思われます。

グローバル化の更なる進展を助け、それに伴う新たなビジネス機会の創出につながり、ヒト、モノ、サービスの行き来の自由度が高まります。これは同時に国際的な競争が増していくことも意味しますので、各企業、各組織がそれぞれ競争力向上に努めていかれることも従来以上に重要になってくると考えます。

 

今後の日豪関係に期待すること

ここ数年の日豪両国首脳の極めて良好な関係もあり日豪関係は大幅に強化されました。

2015年1月には日豪EPA(経済連携協定)も発効し、官民それぞれにおいて二国間の関係は着実に深化しつつあるとの実感がありました。ターンブル新首相の下でもこの流れは変わらないと考えています。

過去数十年にわたり培われてきた官民両面での信頼が根底にある二国間の良好な関係は、今後更に強固なものになると信じています。また、オーストラリアと日本をつなぐ直行便の数も増えてきています。更に人の行き来が増えて、より幅広い民間レベルも含めて、お互いへの理解が一層深まればよいと思います。そして、経済関係も深まり両国企業の更なる発展に繋がることも期待しております。

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