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小原総領事インタビュー

小原シドニー総領事に聞く

このほどシドニー総領事として新しく着任された小原雅博(こはら・まさひろ)総領事に、着任にあたり、オーストラリアとの関係、シドニーの印象、日系コミュニティーへのメッセージなどを聞いた。

 

シドニーの印象はいかがですか?

まだこちらに来て3週間ほどですが、非常にポジティブな印象を受けています。来る前に多くの人から美しいところだと聞いていましたが、実際に来てみて、確かにそうだなという発見がいくつもありました。特に最初の1週間はとても天気がよくて青い空と青い海が印象的でした。気候は自分で選択できませんから、美しさ、快適さという強みを持つシドニー子は恵まれているなと感じました。

二つ目は、シドニーの街自身が非常に美しいということですね。特にシドニー湾という自然の良港に、オペラハウスなどの人工美がよくフィットしています。自然と一体になった街の景観は気持ちを和ませてくれます。

三つ目は、おそらく気候の素晴らしさと都市の美しさが影響していると思いますが、住んでいる人たちがとてもオープンで、親切で、明るくて、ある意味、外から来た我々にも非常にとけ込みやすい雰囲気、環境を作ってくれているという気がしています。

気候、都市、そして人々が素晴らしいので、皆が良いところだと言う意味がよく分かります。

これまでにも何度か来豪されていると聞きましたが。

前職は外務省のアジア大洋州局審議官として、オーストラリアも担当しましたが、やはり中国関係で時間をとられることが多く、オーストラリアには中曽根前大臣を補佐して来訪したことを含め三度程来ましたが、いずれもシドニーは立ち寄りだけでした。それでも太平洋島サミット(北海道)を始めオーストラリアとの関係では良い仕事ができたのではないかと思っています。

シドニー総領事としての抱負をお聞かせください。

シドニーは経済の中心、メディアや大学・研究機関も集まるオーストラリア最大の都市で、一番存在感も影響力も ある都市だと思います。そんな都市の総領事館として、日豪関係の一層の発展に尽力していきたいと思います。よく言われることですが、「日豪関係は問題が無いのが問題だ」と言われるくらい良い関係にあります。最近は捕鯨問題とか、日本企業にとっては資源税の問題などありますが、総領事館としては、メディアや一般国民への発信や働きかけはもちろん、企業支援の観点から日本企業の環境整備にも努力したいと思います。また、日本の文化や日本に関する情報をしっかりとオーストラリアの人たちに伝え、相互理解や相互信頼を高めていくことも重要です。

また、それ以上に、自分自身がオーストラリアをよく知らなければと思っています。そのためには、現場主義が大事ですし、もともと外交官は好奇心が強い人間ですから、オーストラリアのいろんなところ、特にシドニー総領事館の管轄地域であるニュー・サウス・ウェールズ州と北部準州、また一部領事業務についてはニューカレドニアも担当していますので、これらの地域を自分の目で見て、足で歩いて、できるだけ早く自分なりにしっかりと理解して、日本から来られる方たちにも伝えていきたいと思います。

また、シドニーには 非常に大きな邦人社会があり、これは日本、そしてオーストラリアにとっても貴重な財産ですので、この邦人社会との関係を大事にしていきたいと思います。約 2万8000人(シドニーを中心とするNSW州に在留する邦人数)に上る邦人数は、海外の邦人社会では、ベスト5に入るくらい大きなコミュニティーです。 その皆さんの安全が一番大事ですし、皆さんの仕事や生活が順調に進むようにお手伝いすることが大切だと思っています。総領事館にはそのために最前線で対応 している領事部を中心に、具体的な皆さんの声を聞いてサービスを改善していく努力を怠らないようにしていきたいと思います。シドニーは治安も良く、恵まれ た環境にありますが、緊急時、危機の対応に向けた日頃のシステム作り、訓練を怠らないことが重要です。

日豪関係についてお聞かせ ください。

日本とオーストラリアは全般的に非常に良い関係にあります。オーストラリアは日本にとって極めて重要な国で、資源などを中心に経済関係は特に緊密です。オーストラリアの強味と日本の強味がある意味で補完関係にありますので、ウィン・ウィンの形で共に発展することができると思います。そういう経済関係が両国関係の基礎にあります。

また最近では、政治と安全保障の分野でも日豪両国は関係を強化しています。その背景には、基本的な価 値を共有しているということもあります。民主主義や人権の尊重、自由な社会ですね。日豪両国はこういう価値を共有している友邦なんですね。

オース トラリアには日本語を勉強する人も多く、文化交流や留学生交流の分野でも関係は緊密です。JETやワーキング・ホリデー制度も人の交流を厚みのあるものと しています。日本総領事館としては、これまでの良好な関係に安住することなく、日系コミュニティーと一緒になって、オーストラリアとの関係をもっともっと 発展させていく努力をする必要があると考えています。

日系コミュニティーへメッセージをお願いします。

二つお願いがあ ります。ひとつは、先日、戦争中に集団脱走事件のあったカウラに行ってきたのですが、捕虜収容所から集団脱走して亡くなった日本兵、その際に亡くなられた オーストラリア兵の墓地を訪れ献花したのですが、手入れも行届き非常によく管理されていました。また日本庭園も素晴らしく、カウラの市長さん以下、若い人達も含めて多くの関係者が、カウラを日豪友好の、未来志向のシンボルの地として大事に育んでこられたということに感動しました。毎年9月には「桜祭り」と 「戦没者慰霊式典 」が催されていますが、是非、多くの日本人の皆さんに行っていただき、日本庭園や墓地を訪れてほしいですね。そしてカウラの人たちと交流を持ち、友好を深めていただきたいと思います。

また、シドニー湾に侵入した日本軍の特殊潜航艇の攻撃で、オーストラリアの船が沈み、イギリス兵も含めて21人が亡 くなった事件がありましたが、その慰霊祭が毎年行われています。先日、 州総督以下、連邦議員の方も出席されて、68回目の慰霊祭が行われ私も出席したのですが、 潜航艇の乗組員にも敬意を払ってくれていることに感銘を受けました。そうした和解の精神、フレンドシップの精神が受け継がれているということを感じて、ここに住む私たち日本人としても、こうした精神を受け継ぎ、そして未来を志向し協力を深めていくことが大事ではないかと思います。

二つ目は、この7月に日本で参議院選挙が予定されていますが、日本の政治、社会、国のあり方が問われる選挙であり、海外に住む皆さんが日本の行く末を考えるうえでも大事な選挙だと思います。在外選挙にはご不便もあるかと思いますが、総領事館としても万全の準備をしていきますので、3カ月以上当地に滞在し、当館に在留届を出 して下さっている方は是非、選挙人登録をされて、投票に参加していただきたいと思います。在留届は、海外に3カ月以上滞在する方に提出が義務付けられてい ますし、在外選挙登録時にも使用されることから、まだ登録を済ませておられない方は是非登録をお願いしたいと思います。

最後に、 シドニーで個人的になさりたいことがありますか?

東京にいたときは忙しくてほとんど運動する時間がありませんでした。週末も仕事が入ることが少なくなく、趣味といえることをする時間もなかったのが実情です。シドニーに来て密かに、これまでできなかったことをやってみたいと思っています。そのひとつがジョギングです。気候もよく、治安もいいですし、脚力や体力を取り戻すためにも毎朝走っています。9月に行われる「シドニー・ランニング・フェスティ バル」のハーフマラソンに参加して完走するのが目標です。8月には「シティ・トゥー・サーフ」があるので、まずそれに参加して、完走することができれば、 うまく9月につながるかなと思っています。

ただ、こうして公言してしまうと、何が何でも完走しないと口だけだと言われそうで、プレッシャーも感じ始めて、少々後悔もしています。

(JAMSも取材クルーを出して、マイクを突きつけながら走ります!)

いやぁ、動けなくなったところを撮られるかも知れませんね。「総領事、ついに動けなくなりました」って。(笑)

〜是非、マラソン頑張ってください。応援しています。また、 何冊も著書を出されている総領事には、ぜひオーストラリアに関する本を期待しています。(2010年6月2日インタビュー)

【小原総領事プロフィール】

1955 年7月23日生

出身地  徳島県

東京大学文 学部卒業

カリフォルニア大学バークレー校アジア学修士号取得

立命館大学国際関係学博士号取得

1980年 外務省入省

1996 年 国際連合日本政府代表部 一等書記官(98年、同参事官)

1999年 アジア局地域政策課長

2001年 経済協力局無償資金協力課長

2003 年 文部科学教官 国立情報学研究所教授

2005年 在ロサンゼルス日本国総領事館 首席領事

2007年 大臣官房参事官兼アジア大洋州 局

2009年 大臣官房審議官兼アジア大洋州局

2010年5月 在シドニー日本国総領事館 総領事として着任

著書

『東 アジア共同体』(日本経済新聞社 2005年)

『国益と外交』(日本経済新聞社 2007年)

『外交官の父が伝える素顔のアメリカ人の生活と英語』(ディスカヴァー21 2008年)

『日本はどこへ向かうのか?』(中国語、中信出版社 2008年)

『15歳からの外交官が書いた国際問題がとりあえず全部わかる本』(ディスカヴァー21 2009年)

座右の銘  『人間万事塞翁が馬』

家族  妻と一男一女

趣味  読書、執筆

スポーツ  ジョギング(始めたばかり)

 

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