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オーストラリアの年度末は6月。JAMSも例外ではなく、慌ただしくなってきました。午前は語学学校、午後はJAMSで仕事と、普段からバタバタした生活を送っているスタッフEも、いつもに増して忙しい日々を送っております。そんな折、スタッフEの体に異変が。
「なんだか、腰が痛い……」
そこで、本連載で何度もお世話になっている、問診や体の動きから痛みの原因を特定し、回復に向けた治療を行っているスペシャリスト、メトロフィジオセラピーの理学療法士・奥谷匡弘先生のところへ相談に行ってきました!
そもそも、どうして腰は痛くなってしまうのでしょう?
「腰の痛みには『骨盤底筋群』という筋肉が大きく関わっています。骨盤の底にあるインナーマッスルのひとつで、わかりやすく言うと、おしっこやおならを我慢するときの筋肉ですね」
上の写真で先生が手で支えてるところにあるのが、骨盤の底をハンモックのように支える骨盤底筋群。胴体の周囲にコルセットのように巻き付いているインナーマッスル(下の写真の黄色の筋肉)とともに、体を支える大事な役割を持っています。
ところが、この骨盤底筋群を含むインナーマッスル、先生いわく「レイジーな筋肉」ゆえにサボりがち。しかも体の奥深くにあって意識しずらいために、鍛えることが困難なのです。サッカーの長友選手が鍛えたことで有名になったインナーマッスルですが、正しく使えているかどうかがわかりにくいために、たとえ腹筋がシックスパックでムキムキでも、その奥のインナーマッスルは鍛えられていないことも多いのだとか。
「インナーマッスルが弱っていると体を満足に支えられないので、目に見えるムキムキの筋肉、表層筋で体を固定して支えようとしますが、その状態が続くと関節を圧迫して痛みが出てきます。さらに表層筋は縦に伸び縮みする性質があるので、下の方向に負荷がかかり、骨盤の底をハンモックのように支えている骨盤底筋群に負担がかかります。結果、ゆるくなった輪ゴムのように骨盤底筋群から伸縮性が失われ、体が支えられなくなるという悪循環におちいってしまいます」
つまり、骨盤底筋群や胴体の周りを覆っているインナーマッスルを鍛えることが、腰痛改善に効果的ということ! 目に見えず、意識もしにくい体の奥の筋肉を鍛えるために、今回は超音波機を使って体内の動きを見ていきます。
まずは前に体を倒したり、後ろに反ったりしながら体の柔軟性と可動域をチェック。かつては野球やテニスをやっていたスタッフEですが、オーストラリアに来て以来、スポーツはサボリ気味。ご多分に漏れず、可動域は狭くなっています。「何かの拍子に痛みが深刻になる可能性がありますね」と先生。
体の状態を確認し終えたところで、ベッドに仰向けに寝そべり、いよいよ超音波機の出番です。下腹部にクリームを塗り、まずは骨盤底筋群からチェック。スクリーンを見ながら、筋肉を動かしていきます。
上の写真の赤い丸で囲った黒いものが膀胱、その下にある濃い白いものが骨盤底筋群です。「おしっこを我慢するときの感覚で力を入れてみましょう。はい、キュッ」という先生の声に合わせてトライするスタッフEですが、骨盤底筋群はほとんど動きません。
「本来、骨盤底筋群は『動かすぞ』という信号を送っただけで動きますが、腰痛の症状がひどい人の場合はかなりの力を入れないと動かないケースもありますね」と先生。不安な顔をするスタッフEでしたが、「次はオナラを我慢する感覚で力を入れてみてください」という先生の一言でスクリーンに変化が!
膀胱のサイドがへこみ、底が上に上がっているのが分かるでしょうか?
おしっこもおならも我慢するときは骨盤底筋群を使うものの、スタッフEにとってはおならを我慢する感覚のときの方が筋肉の動きが良かったように、目に見えない骨盤底筋群を動かす感覚を引き出すための言葉は人によってさまざま。だからこそ、鍛えるのがむずかしいわけですが、超音波なら一目瞭然です。スクリーンで動きを見ながら、骨盤底筋群を動かす感覚をつかむための練習を重ねていきます。
続いて、胴体周りのインナーマッスルを見ていきます。
赤い線で囲った、白いラインがインナーマッスル。その上の白い線が表層筋、つまりは目に見えるムキムキの筋肉です。まずはインナーマッスルを意識せずに、ただ頭を起こしてみます。
インナーマッスルの太さはほとんど変わっていません。ただ頭を上げただけではインナーマッスルが機能していないことがよくわかります。
では次に、先ほど練習した骨盤底筋群を意識して、インナーマッスルを使って頭を起こしてみます。なかなか上手くいかないスタッフEですが、先生の「『おへそを沈める』っていう感覚がピンとくる人もいますね」という一言で何かをつかみました!
インナーマッスルの白い線が太くなっているのがわかるでしょうか? 「これがインナーマッスルを使っている感覚なんですね……!」と、噛みしめるスタッフE。この後、同じ動きを繰り返して、つかんだ感覚を体で覚えていきます。
「こうやって覚えた感覚を普段の生活で意識して繰り返し使いながら、もともと自動的に動いていたインナーマッスル本来の働きを取り戻していきます。例えば『こういう感覚でボールを投げたら、ボールはこう動く』というように、スポーツや音楽を通じて体の感覚をつかんだ経験がある方は、比較的インナーマッスルの感覚を覚えるのも上手ですね」
超音波機で筋肉の動きをチェックした後は、症状や普段の生活に応じたインナーマッスルのトレーニング方法を教えてもらって、この日の治療は終了。問診の結果、今回は超音波検査を実施しましたが、希望者は誰でも40分105ドルで受けることができます。
例えば腰痛改善のためにヨガやピラティスをやっているのに改善しない人は、「インナーマッスルが上手く使えていない可能性が高い」と先生。体を支える大事な筋肉を効果的に鍛えるためにも、筋肉の動きを目で見ながら感覚を覚えて、健康な体を手に入れましょう!
★Metro Physiotherapy and Injury Clinic(メトロフィジオセラピー)
所在地:Suite 406a, Level 4, 250 Pitt Street, Sydney
電話:0414-272-440
営業時間:予約制・日祝休
http://metrophysiotherapy.com.au/
※超音波検査を希望する方は、検査を受ける30分前にコップ2杯の水を飲んで、トイレを我慢してクリニックへ行きましょう!
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取材・文・撮影:天野夏海(編集部)
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