オーストラリアの連邦議会で2017年12月8日に同性婚が合法化されたことは、皆さんご存知と思います。

同月9日に最初のオーストラリアの同性カップルも婚姻届を提出し、結婚の証として自分の名前にパートナーの苗字を付け加え、同性婚による法的保護を全面的に活用するそうです。この婚姻届、記入欄にはパートナー1、パートナー2と明記され、性別では男性、女性の他に「不特定」を意味する「X」が付け加えられているそうですよ。

[出典] http://www.mardigras.org.au

Happy Mardi Gras!

年をまたいでシドニーのオックスフォード・ストリートで3月3日に開催されたマルディグラ・パレードも、40周年を迎えた今年、今までに紆余曲折あったオーストラリア同性婚の合法化を受けて、200以上のフロートがお目見えするなど大いに盛り上がりました！

私は昨年にボランティアとしてマルディグラに参加して、今年は友人と一緒に観客としてマルディグラを楽しみました。そこら中の人たちとハグしまくって汗だくでした。

マルディグラ映画祭作品『Love, Simon（ラブ、サイモン）』

[出典] https://www.foxmovies.com/movies/love-simon

今年のパレードの週には、マルディグラ映画祭の『Love, Simon』という作品も観にいきました。隣に座っていたおじさんが、上映後にボロ泣きで劇場を後にしていったのを覚えています。

この『Love, Simon』は、アメリカの臨床心理学者ベッキー・アルバータリのベストセラーYA小説『Simon vs. the Homo Sapiens Agenda（邦題：サイモンvs人類平等化計画）』が原作の青春ドラマ映画。主人公のサイモンを『ジュラシック・ワールド』や『エブリシング』などで知られるニック・ロビンソンが演じ、近年DCコミックのドラマ化『アロー』など一連のシリーズをヒットさせているショーランナーのグレッグ・バーランティが監督を務めています。

『Love, Simon（ラブ、サイモン）』あらすじ

男女問わず友人に囲まれて、リアルに親友と呼べる子はたくさんいるけれど、アイデンティティの悩みを打ち明けられるのは、ネットで知り合った匿名の人だけという高校生のサイモン。自分がゲイだということもネットで夢中の「ブルー」にだけは打ち明けられていたのに、同級生のマーティンに秘密がばれてしまい、クラスのアイドル・アビーとの仲を取り持つように脅迫されてしまい……。悩み多き学校生活と恋愛模様の中で、サイモンは「ブルー」と出会うことができるのでしょうか？

『Love, Simon（ラブ、サイモン）』鑑賞後

サイモンの周辺にはリベラルで知的な人が多く、少なくとも「同性愛者を差別してはいけない」という建前は広く共有されているようでした。同級生たちの心の揺れもマイノリティの苦しさも、本人にとっては世界が終わるほどの問題だし、自分では気づかないところで「初期設定（デフォルト）」ができてしまっているということで、サイモンがそれを覆すために「それならストレートだって（自分の超個人的なことについて）カムアウトすべき」という言い分には納得。本来、誰だろうと、極めて個人的なことをまわりに言う必要はないはずなんですよね。

原作は2016年ウィリアム・C・モリス賞受賞作品で、他にも2015年全米図書賞ロングリストや2016年ラムダ賞YA部門最終候補、2016年カーネギー賞ノミネートと高い評価を受けています。そんなYA作品だけあって英語はやさしいし、内容は最高にキュンキュンしておもしろくてハートフル。映画はテンポよく描かれていて、原作は丁寧に描かれているけれど、どちらも笑えました。

この「笑える」ってポイントは大事だと思います。「どうしても社会的な視点で問題として描かれざるを得ないLGBTIQ作品」ではなく、男子高校生の現代の友情と恋愛をすんなり描いたラブコメもしくは青春ドラマになってるということだから。そこにマイノリティとしての悲愴感は微塵もなく、少なくとも世の中は確実に次のフェーズに入ってきていると実感できる仕上がり。映画の上映後もパレードでも幸せな気分でいられました。

映画『Love, Simon』は3月29日（木）からもオーストラリアの劇場にて一般公開するので、興味のある方はぜひ劇場へ足を運んでみてください。

キュン死に注意！

『Love, Simon（ラブ、サイモン）』オーストラリア劇場公開

『Love, Simon』公式サイト（アメリカ）
https://www.foxmovies.com/movies/love-simon

『Love, Simon』予告編

文：武田彩愛（編集部）