【シドニー15日AAP】 2012年9月、中国人学生らが住むアパートの一室から出火し、1人が死亡した火災の公判が始まった。アパート5階から飛び降りる以外選択肢がなかった犠牲者の当時の状況が生々しく報告された。
2012年9月6日、シドニー西部バンクスタウンにあるアパートの室内で勉強していたジンジャー・ジャンさんはベランダで爆発音がしたのを聞き、様子を見に行ったところ、空調機が火に包まれているのを見た。
煙は瞬く間にアパート室内に充満し、逃げ道を塞がれたジャンさんと一緒に室内にいたコニー・ザンさんは窓の外へと逃げた。2人は小さな窓の縁にしがみついたが、室内の煙と火の威力は強く、完全に逃げ場を失った2人はアパート5階の窓から地上へ飛び降りた。
ジャンさんは九死に一生を得たものの車椅子生活を余儀なくされ、ジャンさんのすぐ後に飛び降りたザンさんは地上に叩きつけられた時の衝撃で死亡した。
16日、グリーブ検視裁判所に車椅子で出廷したジャンさんは、「地上の人々が“室内に戻ってドアから脱出しろ”と言ったが、煙の勢いが強く室内には戻れなかった。飛び降りるしかなかった」と涙ながらに話した。
出火原因については、シェアメイトの男性が火事の直前にベランダでたばこを吸い灰皿に捨てたと証言。後の捜査でベランダの空調機の側に引火性物質があったことも分かった。
さらに消防庁によると、このアパートは寝室が3つだが、リビングルームに木製の壁が設置され、寝室がもう一つ設けられていたという。またアパート全体の設計が消防法に沿ったものでなかったことも明らかになった。