♦似たもの母娘♦

昨年の１２月に撮影の仕事で東京に訪れた際に、ちょっとしたパーティーにお呼ばれする事になった。

真っ赤などれすと真っ赤なマニュキアに、真っ赤なヒールをはいていらっしゃって、全身真っ赤なこの女性はカゴメのトマトケチャップを思わせた雰囲気で私にすすり寄ってこう言った。

「あら、お一人ですか？素敵なパーティですよね・・・私は・・」と自己紹介を始めたかと思うと、

早速彼女のお名刺を拝見すると、どうやらこのパーティーのメイン主催者ともいえよう某雑誌の取り締まり役である事がわかった。

私は取り合えず”えぇ、そうですねぇ・・・　素敵なお食事ですねぇ・・　あと赤がとてもお似合いですねぇ・・ほほほー”と取り合えず会話をすすめるべく、お上品に笑ってみた。

するとケチャップレイディーは、”あらどーもぉ、私は赤が大好きで、パーティーには必ず赤を着るの。おほほほぉーー”と見たままのコメントを返してきたので、”あらそうですかぁ、情熱の色ですねぇ。”と訳のわからない、苦し紛れの回答をした私にケチャップレィディーは突然こう言った。

「ところで野尻さんはオーストラリアにお住まいとのことですけど、お子様いらっしゃるの？」

”へ？？？？お子様？？？？っていうか、結婚さえしてないんですけど・・・・　ど、どっちかといえば私がお子様かも・・・”と心の中で絶句した私にケチャップレィディーはこうつづけた。

「ハーフのお子様ってきっと可愛いんでしょーーねぇーーー」

”っていうか、結婚もしてないし・・・　それに子供がハーフになるとは限らないって・・・　想像力すげーなぁーー”

このままケチャップレイディーに話を進めさせてはえらい事になると私は、”ここら辺りで釘をささねば”と思いこう言った。

「えっとですねぇ、実は子供どころか結婚もまだなんですよぉーー、甲斐性なしなのでぇーーっ」と大人の私は謙遜してみると、彼女はすかさずこういった。

「あらー、お子様いないの？？？結婚も？？？まぁーーーーーっ・・・・　オーストラリアの永住権もってらっしゃるのよねー？」と言ったかと思うと、走るように消えていった。

”なんだか、初対面の人に根掘り葉掘り聞く人だねぇ・・　あぁ、オバサンはやだやだ・・・”などとひねくれた気持ちになった私は、シャンペンをグイッと飲み干した。

二人は顔を見合わせて、こういった。

「まぁーー！　シドニーだっけ？　お名刺下さる？」

”こうして人は保険金殺人にあうのだろうか？”と思わせる恐ろしいひと時を過ごさせて頂いた。

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