♦山田さん♦
私と山田さんは10年来の友人だ。
私が始めてオーストラリアに来て数ヵ月後に、”ちょっと変った女性がいるから会ってみる?”と友人の村田さんに紹介されたのが、きっかけである。
当事私はシドニーに来たばかりという事もあり、村田さんだけが唯一の友達だったので、”ちょっと変っててもいいや”と、まるで新種の動物でも見に行くような気持ちで山田さんにあったのは今から11年以上も前の事だ。
当時山田さんは26歳で、当時のワーホリは”25歳まで”という年齢制限だったので、”山田さんギリギリでいらっしゃったのですねぇ”と、いきなり失礼なコメントを浴びせた私に対して、”まぁ、失礼なー!ギリギリ女なんてー”と、ご自分で”ギリギリ”に”女”を追加され、憤慨されていた。
当時は”ギリホリ”などといった言葉も無かったので、この辺りの会話が源になって”ギリホリ”などといった言葉がクリエイトされたのかもしれないと思うと、急に偉い人になった気がした。 私達が勝手に作った”ギリホリ”が広辞苑に追加されるのも、そう遠くは無さそうだ。
そんな山田さんがある日、”オートバイを購入したから、見に来い”と彼女の自宅のクージーまで見に行く事にした。今から思えば、せっかくオートバイを買ったのだから、彼女が私の家に来てくれれば良かったのになーと思うが、せっかくなのでバスに乗って見に行った。
バスに揺られてクージービーチに到着した私は、ビーチ沿いのカフェの前で、大きなハーレーを停めて、大きく手を振っている女性が見えた。 真っ黒なヘルメットをかぶり、渡哲也なみのサングラスをしていたので、よくわからなかったが、どうやら山田さんのようだ。
私の中でのバイクは原付の50ccだったので、750ccだかなんだかのデッカイハーレーにまたがっている山田さんを目の前にした私は、さすがに驚いた。
そんな目を丸くして驚いている私に私を見て、”ちゃんとオートバイっていったじゃーん!”と私の肩をバシッと叩き、”がははははーっ!”と勝ち誇ったように笑った。
”せっかくここまで来たんだから、後ろに乗せてあげるよ。本当のバイクの良さは乗らないとわからないのよ”と、まるで岩城滉一さんのようなセリフに魅了せられた私は、山田さんのたくましい背中を抱きかかえるようにしがみついた。
私がビクビクする間もなく、山田さんは”イェーーーィッ!!”と昔懐かしのお叫び言葉を浴びせ、勢い良く走り出した。
”いぇーーい!”でもなんでもいいから、安全運転だけはお願いしますよ・・と伝えたかったが、あまりの強風で聞えるはずも無く、山田さんは調子に乗ってぐんぐんとばした、その時である。
”ウーーーーーーーッ!!”というサイレンの音が後ろから聞こえてきた。
私は山田さんの腰をぎゅっと掴みながら、肩越しに後方に目をやると、頭上のサイレンをピカピカ光らせたパトカーが見えた。 情けないことに、どうやらスピード違反のようだ。
爆音こそたててはいないものの、ぶっちぎりのヤンキー化していた年増な私たちは、突如げんなりとして、静かにバイクを歩道脇に寄せ、ゆっくりとバイクから降りた。
ちなみに今更ヤンキーと思われてはいけないので、出来るだけ反省した態度を見せることを胸に決めた。
私たちが打ち合わせをする間もなく2人の警官がパトカーからおりてきて、一人のノッポの警官が、えらそうにこういった。 ”スピード違反なのはわかってるなー、免許証は?”
とても反省した態度を見せるべく、二人とも下を向いたまま、山田さんは免許証をのっぽに渡した。
そうするとノッポはこういった。
”スピード違反どころか、免許を取ってまだ1年未満じゃないか!後ろに人を乗せれないのもわかってるなー?”
”ひぃぃぃぃぃーーーっ!!ま、まじでーー??そ、そうなの・・???そ、それは知らなんだ・・”
のっぽの視線をかわすかのように横目で山田さんをチラッとみると、山田さんは私の方をちらっとみて、肩をすくめて舌を出した。 これがトレンディ女優の出演するドラマならば可愛いらしいものかもしれないが、ハーレーにまたがっている山田さんと、トレンディ女優は別者である事は読者の皆様にも是非ご理解頂きたい。
こうして私は、ダブル違反の道連れとなり、その上でっかいハーレーを押しながら、来た道を戻る羽目になったのである。
今でもハーレーに乗る女性を見ると、あの日のことを思い出すが、こうして私は山田さんとの友情が芽生え、ついでに人を疑う心を確実に学んだ私は、大人へと成長していったのである。
♦シドニー・クリエイティブフォトグラフィー♦
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