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燦燦と輝く太陽、澄んだ空気、周囲をぐるりと海に囲まれたオーストラリアは、無公害、無汚染のからだに優しい新鮮な食材の宝庫です。 野菜、果物、肉、魚貝類、乳製品やドライフードまで、比較的安価で 安全に手に入る恵まれた環境があります。
白豪主義が終焉をむかえた1970年代前半以降、オーストラリアは 世界中から多くの移民を受け入れ、多文化国家が形成されています。
常識にとらわれない自由でおおらかな国民気質が料理にも素直に反映され、例えて言えば、西洋料理と東洋料理が融合を繰り返し変化していく、そんな食文化がすくすくと育っています。
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『シドニー市内に戻りつき、セントラル駅前の公園で、ベンチに座ってホットドッグを食べる。食べたらお腹いっぱいになって、昼飯どころか、もう夕食なんかいらないくらい。でもパンもビーフソーセージもおいしかった。オーストラリアはこういうシンプルな食べ物がいける。』
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『海の見えるテーブルで食事をする。まず、オイスターを注文する。小振りで味がいい。「ヘイスティングズ・リヴァー・オイスター」とあったが、淡水で取れる訳ではなく、たぶん海水のクリークでとれる牡蠣なのだろう。僕はイカのフライのサラダとパンを食べる。ヤくんはブルマンディーという白身の魚を選んだ。ウェイターにどんな魚かと尋ねたら、「オーストラリアでとれるうまい魚だ」ということだった。なるほど。僕の食べたイカも新鮮で美味であった(値段は十三ドル)。オーストラリアの食べ物は魚も野菜もしゃっきりとしていて味もいい。値段も安い。とくに人の多い都会から離れて、浜辺の新鮮な空気を吸いながらとる食事は素晴らしい。』
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『しかしオーストラリアのレストランの料理は、都会でも田舎でも、どこで食べても悪くない。ぜんぜん悪くない。少なくともアメリカやイギリスの同等のレストランで出される料理に比べたら、比較にならないくらい質は高い。肉にしても野菜にしてもシーフードにしても、材料は新鮮で、味つけもさっぱりしていて、しつこくない。過度に凝った料理は出てこないけれど、普通に調理されたものが美味しい。オーストラリアは食べ物が美味しいと聞いていて、「ほんとかよ」と半信半疑だったんだけど、疑って悪かった。本当です。いったいどのような過程を経て、このように料理の質が全体的に高く維持されることになったのか、とても知りたい。だってこう言っちゃなんだけど、服装だってどっちかと言うと(言わなくても)あまりファッショナブルとは言えないし、洗練された刺激的な文化によってその名を広く知られているお国柄というのでもないのに(むしろその逆なのに)、レストランの料理はいける。ワインもおいしい。ビールもおいしい。』
************************************************************ 以上、文芸春秋発行・村上春樹『Sydney!』 (ISBN4-16-356940-5)より抜粋 |
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(つづく)
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