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お願い!浴衣を着て日本語を話す子どもになって

明け方、やけにうるさいなぁと起きだして外を見ると、シドニー湾に大きなお船が2隻。クイーン・メリー2と、クイーン・エリザベスでした。世界最大・最高の豪華客船がシドニー訪問です。毎年2月、3月は、世界一周航海の途上にシドニーを訪問するようで、毎度、その大きさには驚かされます。クイーン・メリー2は大きすぎてサーキュラー・キーの客船ターミナルには接岸できず、いつもウールームールーの海軍基地にひとり離れてお泊まりです。

さて今日は昨日の続き、「国際母語デー(International Mother Language Day)」です。

日本人の多くが母語としての日本語を話していますが、ではオーストラリアに移住してきて、ここで生まれた子どもたちにとっての母語は何でしょう? オーストラリア在住日本人の多くは、妻(母親)が日本人で、夫(父親)がオーストラリア人というカップル(家族)です。この場合、子どもたちはお母さんとは日本語で、お父さんとは英語で会話をするというケースが多いようですね。

さて、この子どもたちの母語は、日本語と英語ということになります。ややこしいのは夫(父親)が移民してきた海外生まれの場合です。中国人だったり、韓国人だったり、イタリア人だったり、エジプト人だったり、とにかくさまざまな国籍(家系)の方が夫(父親)の場合、その子どもは日本語と父親の国の言葉を話し、さらに英語を習うということで「トリリンガル」になる可能性があります。

そうなるといったい母語はどうなってしまうんでしょう。母親が一所懸命に日本語で話しかけてかろうじて片言の日本語を話す子どもに育てるのが精一杯で、とても母語は日本語とはいえないでしょうね。子どもにとっては圧倒的に英語が占める比重が大きいのですから。

このような状況に置かれた日本人のお母さん方は、子どもには日本語を覚えてもらいたい、理解してもらいたいと願い、週末の日本語補習校に通わせたりして、何とか日本語を忘れないようにと努力しています。シドニーでこのような日本語学校を3校運営しているシドニー日本クラブ(JCS)では、この日本語教育を「継承日本語教育」と位置づけて実践しています。

継承日本語ってなんでしょう?  継承日本語教育の第一人者の中島和子氏(トロント大学名誉教授)によると、母語と継承語について次のような説明をしています。

母語とは何かというと、「初めて覚えたことばで、今でも使えることば」です。そこで、海外で生まれた子どもにとっての母語は、確かに初めて覚えたことばは親の母語(日本語)ですが、現地の学校に通い始めると、現地のことば(英語)の方が「強いことば」で、母語が「弱いことば」になっていくため、親が日本語で話しかけても英語でしか反応しなくなります。つまり、普段の生活で使うことばが日本語から英語にシフトしてしまいます。

こうなると日本語は子どもの母語というにはあまりにも弱いし、かといって外国語かというと親のことばだからそうでもない。また、英語が流暢に話せるからといって英語が母語かというと、あまりにも根が浅い。そこで、子どものことばを母語と外国語に分けるのは難しく、むしろ「継承語」と「現地語」という概念でくくる方がぴったりする。つまり、「継承語」とは親から受け継いだことば「現地語」は子どもの育つ環境で毎日使うことば、というわけです。

もちろん継承語も現地語もひとつとは限らず、国際結婚の家庭では、父親の母語と母親の母語の二つの継承語を持つことになるし、多言語環境であれば複数の現地語を使って生活することになります。

こうして、ここオーストラリアでお子さんを育てる日本人の方にとっては、「継承語」としての日本語を子どもたちに学んでもらい、なんとか日本語を受け継いでもらいたいということになります。

確かに親の話す日本語は理解しているようですが、答えるときは英語という子どもが多いですね。それに知っている日本語はマンガやアニメの日本語で、それでも大きくなっても日本語を忘れなければいいと思っているのですが、結局は、周りの環境やお友だちの影響で当然英語を話すことが中心になり、次第に日本語は忘れていくようです。

言葉は文化の源と言いましたが、言葉を使わないでいると、背景としての文化の理解もできず、次第に文化や伝統を忘れていきます。なんだか寂しいです。

先月のオーストラリア・デーに行われたイベントに、日本人のお母さんと子どもたちが、みなで浴衣を着て参加し、船上パレードを行いました。和太鼓の演奏と浴衣の装いで、観客に「日本」をアピールしたのですが、海外にいるからこそこのような機会に日本の文化を発現したいものです。

そのためにもぜひ、お子さんには継承語としての日本語を伝えていきたいですね。

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