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お金をもらっても行きたくない?

オーストラリアは人口の約7割が、州都や東海岸部の地方都市に集中しています。内陸部にはほとんど人が住んでいません。殖民開拓の昔から、アウトバックと呼ばれる内陸部は不毛の大地とされて、沿岸部への入植が進められてきました。

今日でもその状況はそれほど変わることなく、内陸部の町はさながら陸の孤島のような状況にあります。そんなオーストラリアの地政は、まさに「距離の暴虐」(ジェフリー・ブレイニー)として、さまざまな困難をもたらしています。

政府はなんとか地方を活性化させようと、例えば移住者へのビザ発給において、地方居住を条件に、ビザの審査条件を緩和するなどして、人口増を図っています。

ニュー・サウス・ウェールズ州では、シドニー中心部がもう入り込む余地のないほどになっているため、住宅開発がどんどん郊外へと延びています。

先日、ゴスフォードに行く機会がありましたが、昔と比べて、開発されている光景に驚きました。分譲住宅地が広がり、今ではセントラルコーストからシドニーに通勤する人もかなりいるようです。

そんな状況を受けて、州政府では、今年度から4年間の時限立法で、地方に居住する場合、7000ドルの補助金を出すと発表しました。都市部に住む人が、自宅を売却して地方の家を購入して移り住むということで、家の購入価格が60万ドル以下という条件があります。

また、都市部というのは、Sydney、Blue Mountains、Hawkesbury、Gosford、Wyong、Wollondilly、Wollongong、Newcastleです。これらの地域に住む人が、それ以外の地域に移住するという場合に対象となります。

州政府はこれで地方が活性化すると意気込んだのですが、制度開始の7月から9月までの3カ月で、補助金申請数はわずかの49件です。政府は年間7000件の申し込みを見込んでいたのですが、あまりの人気のなさに驚いています。

政府の担当者はまだ3カ月しかたっていないと強気の見解を発表しましたが、おそらく1年経っても7000件は無理でしょう。

7000ドルという金額が低いという意見や、都市部の自宅を売却しなければならず、加えて対象の地域があまりに地方過ぎるという意見が出ています。まあ、地方を活性化するとはいっても、ほとんど何もない不便な地方に移り住んでもらおうという考え自体に無理があるのでしょうか。

そんな補助金を出すくらいなら、その予算を地方のインフラ整備に回したほうがよっぽど活性化につながるというもっともな意見が出ています。

たとえお金をもらっても便利な都会に住んでいたいという考えは自然でしょうね。

オーストラリアは難民を受け入れていますが、最貧国や内戦地域からの難民にとって、オーストラリアは夢のような国だと思います。でも、オーストラリアのアウトバックは難民にとっても本国の暮らしよりひどいものに映るのか知らん。

(水越)

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