シドニーのタクシードライバーは、道をよく知らないという噂があります。それほど素人ドライバーが多いということです。
タクシードライバー養成学校では、6週間のコースだったり、48時間の授業と、あとはDVDで自習するというものなど、なんだか実に簡単な講習でタクシードライバーになれるようです。
もちろん、州の運輸局の実施するテストに合格しなければいけませんが、著名な施設の場所を示したり、ドアーを開けたまま車を動かしてもよいか?とかいう問題に答えるもので、それほど難関とは思えません。
とうことで、移住してきたばかりの人がタクシードライバーになる場合もあるわけで、以前、地図帳を脇に置いて調べながら走るドライバーの車に乗ったことがありました。
大体、マナーが悪いドライバーも多いですね。テイクアウトの食べ物を脇に置いて、食べながら運転しているのがいました。携帯片手にSMSを打ちながらというのもいました。
それに問題なのは、犯罪歴のあるドライバーが、チェックされずに乗務しているということです。2011年の1年間で、タクシードライバー22人と、バスドライバー17人の免許がキャンセルされました。なかにはタイヤレバーで乗客に殴り掛かったり、女性に暴行を働いたりしたドライバーもいます。
どうも常に警察の犯罪レコードとドライバーのデータ照合を行なっていないようで、そんな犯罪ドライバーが運転している状況が野放しにされているようです。
いつも不思議に思うのですが、なぜタクシードライバーはシートベルトをしていないのでしょう。頻繁に停止して客の荷物を積み込んだり降ろしたりするから…などと思ったりしましたが、どうもそんなことではないようです。
客の暴行から身を守るためなんですって!
シートベルトをしていると、客から暴行された時にすぐ逃げ出すことができなかったり、シートベルトで首を絞められたりする可能性があるので、タクシードライバーに限ってシートベルトはしなくても良いのだそうです。
1971年に導入されたこの法律があるために、シートベルトをしているタクシードライバーは全体の10%以下です。ちなみにこんな法律があるのはオーストラリアでもニュー・サウス・ウェールズ州のみです。
で、問題がないかというと、もちろんあります。タクシーの事故でシートベルトをしていなかったために死亡したドライバーは、死亡事故7人のうち4人という高い率でした。一般の自動車事故ではシートベルト未装着による死亡率は15%です。それに一般のドライバーと比べてタクシードライバーの事故による重傷率は2倍以上だとされています。
そんなわけで、タクシードライバーにもシートベルト装着を義務づけようということで、ようやく州政府も動き出しました。
タクシードライバーの間には、「タクシードライバーは特別な身分で、だからこそシートベルトをしなくても構わないんだ」という変な特権意識があるようです。
さて、法改正で、シドニーのタクシー事情も変わることになるのでしょうか。
(水越)
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