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国勢調査に見るオーストラリア社会

2012年6月21日に国勢調査の結果が発表になりました。オーストラリアでは5年に一度、国勢調査を実施しています。今回発表になったのは、2011年に実施された国勢調査の結果です。

これによると、オーストラリアの総人口は2,150万7,719人で、その前の2006年国勢調査と比べると、約165万人、8.3%の伸びです。特に資源ブームが影響してか、西オーストラリア州の人口増が一番大きく、2006年から28万人、14.3%の伸びを示しています。次いで、クイーンズランド州の42.8万人、11%の伸びでした。

ちなみに10年前と比べると、人口は14.6%の伸びです。年齢の中央値は37歳で、10年前の35歳から2歳増えています。これってオーストラリア社会が高齢化しているということでしょうか。

総人口のうちオーストラリア国内で生まれた割合は69.8%で、海外生まれは24.6%。これは10年前の72.6%、21.9%と比べると、国内出生者が減少して、海外出生者つまり移住者が増加していることを示しています。その結果、家庭で英語を話す人の割合も、10年前は80%だったのが、76.8%に減ってきています。英語に次いで多い言語は中国語、次いでイタリア語です。

移住者ですが、特に近年は、中国人とインド人の移住者が急増しています。インド生まれの移民が2倍以上に増え、中国やタイ、イラク生まれも50%増加と、アジア・中東系の人たちが増加しています。海外出生者の82%は州都に暮らしています。総人口の66%が州都に暮らす比率からすると、移住者は都市部に集中しているということです。それも、シドニー、メルボルン、パースの3都市に集中しています。

ところで生活水準はどう変化してきたのでしょう。

個人所得では、中間値が週577ドル、年収3万ドル。世帯所得では、週1,481ドル、年収7万7,012ドルです。これは10年前と比べると58%の伸びで、つまり10年間で1.5倍以上収入が増えたことになります。

一方、持ち家率は67%で、住宅ローンの返済額は月平均1,800ドル。賃貸の場合の家賃は、週平均285ドル。10年前と比べると約2倍になっています。

ということは、この10年間で所得は1.5倍強に増えたが、家賃やローンは2倍になっているので、生活はやっぱり苦しいということになります。

オーストラリア最大の都市、シドニーの場合は…

シドニーの人口は約440万人。年齢の中間値は36歳と、全国平均より1歳若いですね。オーストラリア生まれは59.9%で、海外生まれは34.2%と、全国平均と大きな差があります。家庭で英語を話す割合も59.9%と、かなり差があります。シドニーではアラビア語、そして中国語が多く、近年は中東系の移民がシドニーに増えているようです。こうしてみると海外生まれが多いということで、やはりシドニーは他都市に比べてマルチカルチュラルな街ということになります。

気になる生活水準はどうでしょう。物価が高いので住宅ローンの返済額も月平均2,167ドル、賃貸の家賃は週平均351ドルと、全国平均よりかなり高いです。世帯所得は平均年収8万7,516ドルと全国平均より1万ドル多いのですが、物価高に見合っているのでしょうか。ちなみに全国で一番の高給取りはキャンベラの11万8,404ドルでした。

ちなみに総人口に占める同性カップルは、3万3,714組です。うち男性同士が1万7,584組で、女性同士が1万6,131組です。2006年と比べると32%増加しています。また、信仰面ではキリスト教の信者数が減少し、無宗教という人が増えています。

こうして見ると社会の多様化が年々、進行しているようです。オーストラリアはますます多文化・多民族化していくのでしょう。そんなオーストラリア社会に暮らす私たち日本人は、アイデンティティーをどう保っていくのでしょうか。

(水越)

■2011年国勢調査による人口(%は2006年国勢調査からの伸び率)

オーストラリア全国

2,150万7,719人(8.3%)

 

ニュー・サウス・ウェールズ州

691万7,656人(5.6%)

シドニー 439万1,673人(6.6%)

ビクトリア州

535万4,040人(8.5%)

メルボルン 399万9,980人(9.7%)

クイーンズランド州

433万2,737人(11.0%)

ブリスベン 206万5,998人(11.5%)

西オーストラリア州

223万9,171人(14.3%)

パース 172万8,865人(14.3%)

南オーストラリア州

159万6,570人(5.4%)

アデレード 122万5,235人(5.9%)

タスマニア州

49万5,351人(4.0%)

ホバート 21万1,654人(5.0%)

北部準州

21万1,943人(9.9%)

ダーウィン 12万586人(13.8%)

首都特別地域(キャンベラ)

35万6,586人(10.3%)

 

(出典:ABS)

■人口に占める海外出生者の上位10カ国

英国

110万1,082人

20.8%

54歳

ニュージーランド

48万3,397人

9.1%

40歳

中国

31万8,969人

6.0%

35歳

インド

29万5,362人

5.6%

31歳

イタリア

18万5,403人

3.5%

68歳

ベトナム

18万5,360人

3.5%

43歳

フィリピン

17万1,233人

3.2%

39歳

南アフリカ

14万5,682人

2.8%

39歳

マレーシア

11万6,195人

2.2%

39歳

ドイツ

10万8,001人

2.0%

62歳

その他

218万3,800人

41.2%

44歳

合計

529万4,200人

100%

45歳

(%は海外出生者人口に占める割合。年齢は中央値)

■家庭で話す言語トップテン

言語

人数

人口比

英語力

国内出生率

英語のみ

1539万4,700人

80.7%

83.8%

中国語(北京語)

31万9,500人

1.7%

37.5%

9.0%

イタリア語

29万5,000人

1.5%

62.1%

43.2%

アラビア語

26万4,400人

1.4%

61.9%

38.5%

中国語(広東語)

25万4,700人

1.3%

46.4%

19.9%

ギリシャ語

24万3,300人

1.3%

65.0%

54.1%

ベトナム語

21万9,800人

1.2%

39.5%

27.9%

スペイン語

11万1,400人

0.6%

62.1%

21.9%

ヒンドゥー語

10万4,900人

0.5%

80.2%

9.8%

タガログ語

7万9,000人

0.4%

66.9%

5.9%

※英語力は、英会話能力の高い人の割合

■宗教別信者数

キリスト教(カトリック教会)

543万9,267人

25.4%

キリスト教(英国国教会)

367万9,907人

18.7%

キリスト教(ユニテリアン派)

106万5,794人

5.0%

キリスト教(長老教会)

59万9,515人

2.8%

キリスト教(東方正教会)

56万3,072人

2.6%

仏教

52万8,978人

2.5%

イスラム教

47万6,290人

2.2%

ヒンズー教

27万5,500人

1.3%

ユダヤ教

9万7,300人

0.5%

無宗教

479万6,786人

22.3%

(%は人口に占める割合)

 

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