クラウドファンディングを利用したことはありますか?
今年に入ってから、クラウドファンディングで資金集めをしたり、投資を考えている方からの質問を受けることが増えてきている。
クラウドファンディングが始まった頃は、例えばミュージシャンに資金を出した人には出資金で作成したCDを受け取れるといった「購入型」がほとんどだったようだが、最近は出資者に会社の株を渡す「投資型」が増えているようだ。私が質問を受けるのもこのタイプのクラウドファンディングだ。
イギリスの大手クラウドファンディングサイトであるCrowd Cubeでは、昨年末、実業家が新しいクラブハウスを作るために出資を募ったところ、わずか32日で143人の投資家から£1mの資金を集めたそうだ。これらの事例によって、クラウドファンディングが効果的な資金集めの手段として更に注目されることになった。
ところが、オーストラリアの大手クラウドファンディンサイトであるiPledgやPozibleでは現在「投資型」クラウドファンディングを禁止している。消費者保護法や公正取引法等が加速度的に発達するe-commerceに追いついておらず、ASIC(Australian Securities and Investments Commission)がガイドラインを発表する中、これらのサイト運営者が「投資型」に関しては自粛している状態だ。
ASICが発表したガイドラインによると、「投資型」クラウドファンディングは次のような既存の法令を順守する必要があり、注意しなくてはならない。
金融商品の広告に関する各種規制
金融サービスライセンスの取得
資金集めの情報開示義務に関する法令
売上金管理計画の登録義務
消費者保護法の遵守
誰が契約の当事者になるのか、契約法上の問題
今年4月、アメリカでは、その名も“Jumpstart Our Business Startups (JOBS) Act”というキラキラネームではないか!といいたくなるような法律が制定された。この法律では、個人が一つのプロジェクトに投資できる金額の上限をその個人の収入や資産によって制限していたり、発行できる株価総額の上限をUS$1mとしたりするなどの規制を盛り込んでいる。
現在オーストラリアでは、このようなクラウドファンディングに関する法令を設けるべきかどうかが議論されている。規制の主な目的は、消費者保護である。個人がオンラインで手軽に投資できる一方で、リスクを十分に理解しないまま個投資してしまわないようにルールを設ける必要があると言われている。
クラウドファンディングのようにウェブの世界は次々とクリエイティブに発展していっているが、法律家としてそれらに対応できるようフォローし続けるのも日々の仕事のうちである。終わりがなく大変ではあるが、クラウドファンディングをビジネスに取り入れようと相談に来る方々のビジネスプランを聞くと、こちらの発想も豊かになったような気分になるので楽しいものである。
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