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第3回 肩の痛み(肩関節インピンジメント症候群)

日豪プレス 2011年11月号 掲載記事

第3回:肩の痛み(肩関節インピンジメント症候群)


▶▶▶フィジオセラピーは、筋肉や関節の痛みや機能障害、神経系機能障害や呼吸器系疾患などの治療やリハビリを行う専門家で、必要に応じてMRIや専門医に紹介し、包括的な治療を行っている。さまざまな体の機能を知り尽くした奥谷先生に、体の痛みの原因や改善法について聞いてみよう!

テニスが大好きなBさん(45歳)を例にご紹介します。Bさんは、最近サーブでラケットを頭上に振りかぶると肩に痛みが出ます。ラリーをしている時には問題はありませんが、その日の夜痛みが出たり、翌朝に痛みやこわばりがあったりします。しかし、2〜3日で落ち着くのでまたテニスをしていました。日常生活での支障はなくても、例えば戸棚の肩より高い位置に腕を伸ばすと痛みが走ります。

肩関節の仕組み

肩関節は靭帯(じんたい)、筋肉、関節包(かんせつほう)などで形成されています。関節は半球が皿の上に乗ったような形で多方向に動かせますが、不安定で脱臼しやすい設計です。この関節を安定させるために4つの筋肉からなる回旋腱板(かいせんけんばん)があります。その1つである棘上筋(きょくじょうきん)は肩甲骨(けんこうこつ)と肩峰(けんぽう)の間を通り、上腕骨(じょうわんこつ)につながって肩関節の安定や腕の上下運動の役割をします。また、肩峰と棘上筋の圧迫、摩擦を軽減するためにクッションの役目をする滑液包(かつえきほう)もあります。

猫背から来る、筋力のバランスの崩れが原因

Bさんの場合、仕事も忙しくデスク・ワークの日々で、猫背になりがちです。この姿勢では肩甲骨の位置が前方上部にずれてしまい、肩関節周辺の正常な筋力バランスが失われます。また、この状態でテニスのラリーなどの反復運動を行っていました。またウォームアップも半ばで、きついサーブを打ったりしていたので、回旋腱板に過度の負荷がかかっていました。筋力のバランスが崩れたことや年齢とともに筋肉、腱の変性が起こり弱化していたこともあり、結果的に、肩峰がその真下を通っている棘上筋と滑液包を圧迫して炎症を起こしていました。

フィジオセラピーの治療では、筋肉繊維に老廃物が溜まり収縮できなくなった箇所(トリガー・ポイント)をほぐしたり、筋肉リリース・マッサージ、針治療などを施します。関節包が炎症後の癒着によって硬くなっているのを緩和して、肩関節の可動域を回復させます。弱化した回旋腱板の外転筋、正しい姿勢を保つために必要な僧帽筋などを筋トレで強くするエクササイズも処方します。姿勢を改善して維持するように意識を持つことで肩、首、背中の痛みを未然に防ぐことにもつながります。

こういった症状は、発症時に診察を受けて、慢性化を防ぎ早期回復につなげることができます。

*同コラムは、一般医療情報の提供を目的としています。症状や治療法は人によって異なりますので、必ず専門家の指示に従ってください

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