カンガルー島の南海岸、シールベイ保護公園は野生のオーストラリアンアシカ(Australia Sealion)の生息地で、オーストラリアで3番目に大きいといわれる繁殖コロニーには野生アシカが1000頭も群生しています。
ここでは、砂浜を歩いたり昼寝をしたり、赤ちゃんアシカにお母さんアシカが授乳したりする様子が身近で観察できます。毎年世界中から11万人もの人がオーストラリアで最も珍しいアシカの生態を見に訪れています。
この保護区への立ち入りは無料ですが、オーストラリアンアシカの観察はビジターセンターから出発するガイド付きツアーに参加しなければなりません。
ツアーは午前9時から午後5時まで、夏場(12月-1月)は午後6時まで催行されています。レンジャーの案内に従って、約800mのボードウォークを砂浜まで歩きます。アシカに過度なストレスを与えないようご注意を!ツアーの参加代金はこちら。
http://www.environment.sa.gov.au/sealbay/Visiting_the_park/Fees
絶滅の危機から復活したオーストラリアンアシカ
1800年代前半、英国植民地として駆け出したばかりのオーストラリアでは、アシカの毛皮と脂は英国や中国への輸出産品の1つでした。カンガルー島には当時、500人以上ものSealers(アシカ猟師)が住みつき、1850年代までに一帯に生息していたオーストラリアン・シーライオンを大量に捕獲しました。
シールベイのコロニーは、人を寄付けない隔絶された環境だったためアシカ漁師から難を逃れることが出来ました。現在オーストラリア全体で14,700頭の生息が確認されていますが、そのうち約1000頭がカンガルー島のシールベイで暮らしています。
彼らの食料となるイカ、タコ、カニやエビ、魚が豊富な海と、強風や雨をしのぐ役割を果たしている砂丘のおかげで、彼らはここで暮らすことが出来るのだそうです。
アシカの生態
アシカは餌をもとめて海に潜りまくります。一回の潜水でメスは通常80メートル、4-5分のあいだ、オスの成獣は水深275メートル、約7分ものあいだ潜水を続けられます。
餌を探すときは単独行動が原則。3日間で900-1200回も潜水を繰り返すそうです。海中のほうが陸上よりもはるかに機敏な動きができますが、体力的に弱っていると天敵の大型のサメに捕食されてしまいます。
アシカの寿命は長いもので20年以上ともいわれていますが、赤ちゃんアシカのうち大人になるまで生きられるのは、3頭に1頭といわれています。
アシカ、オットセイ、アザラシの違いとは?
大きなくくりで言えば、すべて鰭脚類(ききゃくるい=海生哺乳類のグループ、水中での生活に適応し足びれが発達した哺乳類)に属していますが、アシカとオットセイは近い仲間で、アザラシはちょっと違うんです。
何がどう違うかといえば、アシカとオットセイは前足を使って鳥のように羽ばたくように泳ぎますが、アザラシは魚のように後足を振って泳ぎます。
また、アシカとオットセイは陸上では後ろ足を前に折り曲げ、前後の足を使って歩くことができますが、アザラシは陸上では腹這いで這って動くという点が異なります。
いずれも海中での動きは機敏で陸上では動きが鈍く、人間が捕獲しやすい動物のため、かつてカンガルー島でもその毛皮と脂を目的としたアシカ漁が盛んに行われ、一時は絶滅の危機に瀕したそうです。
フリンダースチェイス国立公園はカンガルー島の西側に位置する広大な自然保護エリアです。
密生したユーカリ、ティーツリーの原生林にはオーストラリア本土では絶滅してしまった珍しい動植物の固有種が多く生息し、海岸沿いでは風光明媚なドライブをお楽しみいただけます。
オーストラリアの奇岩といえば、大陸中央部にある地球のへそ、ウルル・カタジュタ(エアーズロックとマウントオルガ)やデビルズマーブル、西オーストラリア州のウェーブロックなどが有名ですが、カンガルー島のリマーカブルロックスも負けてはいません。
永年にわたり海から押し寄せる波、吹きつける風、雨と太陽によって侵食され、大小幾つもの自然のオブジェクトとなって視る人の目を楽しませてくれます。
駐車場から岩まではボードウォークが整備され、海の色が美しい南海岸を背景にとってもキレイな写真が写せます。
ニュージーランドオットセイが群生するアドミラル・アーチ
リマーカブルロックスから6km離れたところにある、こちらは自然のアーチです。
リマーカブルロックスが比較的なだらかな表面なのに対し、こちらは地下のマグマが海面まで隆起して一気に冷やされたようなゴツゴツした岩肌が特徴的です。
リマーカブルロックス同様、駐車場から岩までボードウォークが整備されており、ちびっ子からご年配の方まで安心して歩けます。アーチの周辺にはニュージーランドオットセイが群生しており、年々その数を増しているそうです。
アドミラルアーチのすぐそばにある1906年に建造された石積み灯台。かつての灯台守とその家族が暮らしていたコテージが観光客向けのユニークなアコモデーションとして改築されています。
ユーカリの原生林が生い茂る保護区では、木の上で昼寝をしている野生のコアラを数多く観察できます。
コアラの他に、カンガルー、ワラビー、ハリモグラといったネイティブの有袋類も生息しているので、日中でも運が良ければこれらの動物に遭遇することがあります。
実はこのコアラ、元々カンガルー島に生息していたわけではなく、大陸本土から人間によって持ち込まれた動物なのです。1920年代にコアラの毛皮が高値で取引された結果、南オーストラリア州のコアラの数が激減してしまい、絶滅の危機に瀕したコアラをカンガルー島で繁殖させよう、というのが当初の計画でした。
天敵の肉食獣がいないこの島にはコアラの餌となる稀少なユーカリが豊富で、コアラにとってカンガルー島はまさに天国。ところがです、1923年に18頭持ち込まれたコアラが増えすぎて一時はユーカリの森を食べ尽くす勢いが止まらず、これはヤバイと保護区からコアラを一定数駆除する計画が実施されました。
これがメディアで報道され世界中に物議を醸し出すことになりました。わずか100年前の人間のわがままな振る舞いが残した負の遺産、こんな平穏な島にもあるんですね。
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