7月18日(月)、シドニー市街のClarence StreetにあるDexus Placeにて、サイボウズ社・青野慶久社長によるセミナーが開催された。「サイボウズ社・青野慶久社長、オーストラリア市場進出の意気込みを語る」と題したセミナーに、さまざまな業界を代表する日系企業の経営者などおよそ50名の参加者が集まった。
青野慶久(あおの よしひさ)プロフィール
1971年生まれ。愛媛県今治市出身。
大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立。
2005年4月代表取締役社長に就任(現任)。
社内のワークスタイル変革を推進し離職率を6分の1に低減するとともに、3児の父として3度の育児休暇を取得。
また2011年から事業のクラウド化を進め、有料契約社は15,000社を超える。
総務省ワークスタイル変革プロジェクトの外部アドバイザーやCSAJ(一般社団法人コンピュータソフトウェア協会)の副会長を務める。
著書に『ちょいデキ!』(文春新書)、『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)がある。
加藤靖之さん
マネージング・ディレクター/M.I.S. Australia(IT)
※kintoneシステムインテグレーター
オーストラリアではノウハウが会社ではなく個人のリソースになってしまいがちですが、みんなの知識として共有するうえでkintoneは有益だと思います。また、煩雑な業務に追われて自分の能力をなかなか活かせない環境を解消することで、よりその人の可能性を追求できるようになり、その人のモチベーションにもつながっていくと思います。
さらに、kintoneは導入実績が4,000社を超えているため、API(ソフトウェアからOSの機能を利用するための仕様)の精度が高くなっていってることも大きな強みです。長年ビジネス・アプリケーションを専門にしてきた弊社のノウハウを活かし、アプリの使い方から作り方、構成にいたるまで、業種やお客様の考え方に合わせて提案をしていきたいですね。
作野善教さん
マネージング・ディレクター/doq(マーケティング)
※取材時はkintoneを導入して1ヵ月程度
もっと効率よく、チームメンバーも会社もハッピーで、そこからのアウトプットもクオリティが上げられる施策はないかと考えていてkintoneを導入しました。7月に東京オフィスができ、国を越えたシームレスなチームワークをつくる狙いもあります。
実務では日報に利用しています。モバイルでも確認できるし、日報があがると通知が来るので把握しやすいです。社員の悩みなども吸い上げることができるのが大きいですね。また、休暇や経費の申請にもkintoneを使い始めました。どこにいても承認やコメントができ、誰がいつ、どのような申請をしたのか履歴が残るので便利ですね。どこにいてもリアルタイムでプロジェクトを進めていくためにベストだと思っています。
杉原圭典さん
マネージング・ディレクター/Senko Logistics Australia(物流)
※取材時はkintoneを導入して1週間程度
青野社長が社員のことを考え、会社が真剣に働き出す環境を作り出す姿勢にすごく共感しました。
業務の引き継ぎがうまくできるよう、情報共有のツールを探していたときに6月のセミナーに参加して、kintoneの導入を決めました。導入したばかりの頃は、今までのやり方でいいという人もいたんですけど、個人でできる仕事量は決まっていますし、今の物量の段階からプラットフォームを作り、さらに物量が増えたときにもそれを土台に運用していくことができる環境づくりをやっていかなければならないことを理解し、みんながkintoneに向き始めました。
現在は輸出入の工程管理で使っていて、今後は個人のスケジュール管理なども行なっていきたいと思っています。
向井真理さん
KDDI Australia(通信)
離職率が28%から3.7%にまで激減したと聞いて、IT企業なのにすごく低い割合だと感じました。
うちの会社はメールでのやりとりが多いのですが、リアルタイムのチャットのようなコミュニケーションがより円滑になる基盤があれば、プロジェクトの提案やお見積りがよりスムーズに出せるのかと感じ、社内での情報共有のツールとしてkintoneは使えるのではと思いました。「誰でもアプリを作ることができる」ということで、すべて自分で作らなきゃいけないのかと思っていたんですけど、いろいろなテンプレートがあるとお聞きしたので、それを利用したいですね。
女性の活用や充実した育休制度をはじめとするサイボウズ社の斬新な文化、ライフスタイルを含めてもっと啓蒙していただきたいなと思います。
ペロー・麻美さん
ディレクター/Revo Hair Atelier(美容)
サイボウズ社は自社の方針だけでなく、国の文化を含めてみんなでいっしょに変えていこうということ、そしてオーストラリアと似たような文化を取り入れてくれたことがうれしいですね。
うちは最近、上海にもサロンをオープンしました。kintoneは日本語、英語、中国語の3カ国語に対応しているので、その点でもいいなと思います。中国(海外)とのやりとりのなかで、タイムリーな情報共有が一番大きな点だと考えています。今までの紹介事例は企業が多かったように思いますので、企業だけでなくリテールや違う分野のビジネスへの活かし方を聞いてみたいですね。大企業や中小企業だけでなく、より小さな規模のところでどのように活かせるのかが気になります。
斉藤大さん
クライアント・エグゼクティブ/Aon Risk Solutions(保険)
最初のアメリカ進出に失敗し、そこから何を学んで先に進み、そしてオーストラリアで何をしていくのかというところに非常に腹に落ちるものがありました。
我々の仕事は前年の個人の経験をベースに今年の仕事を行なっていくことが多いのですが、今日のセミナーを通して改善の余地があるように思いました。改善することで個人の負担が減り、会社全体としての方向性も見えてくるのかなと思いました。
会社全体としてはスペシャリストが多く、自分の知識や経験を自分のカードとして使っていくのかが非常に大事なのですが、うちのチーム自体は日系ベースでやっているので、蓄積した知識や経験をみんなで共有するスタイルが合っています。そのバランスを取っていくことが大切だと思っています。
瀧山典子さん
CEOアシスタント・人事部マネージャー/Masuya International Australia(飲食)
青野社長が3回育児休暇を取られていることや、女性の社会進出を会社の制度として取り入れ、それを利用する社員も増えてきているというお話がとても印象的でした。離職率が激減したのも、社長がそういった制度設計をやってきた効果のあらわれですね。オーストラリアの日本企業も法律を遵守するようになってはいますけど、育児休暇が最長6年取れることや、在宅勤務ができるなど、もっと女性の進出のための積極的な仕組みを取り入れていくようになれたら良いなと思いました。レストランの業務はどうしてもメールにアクセスできる時間帯が限られてしまい、グループ6店舗でタイムリーな情報共有ができたらと思っています。レストランの業務だとどのような利便性があるのか知りたいですね。
勝田順子さん
プリンシパル/カツダ・シナジー・ロイヤーズ(法務)
今回、セミナーに参加してはじめてkintoneを知りました。もうちょっと実際のデモとかあった方が、自分のところで実際に使うときのイメージがしやすいかなと思いました。実際に導入するかどうかは、もうちょっと詳細がわかってからですね。
私の事業は弁護士事務所なので、共有されてしまうと困る情報も多くあります。そのあたりがどれだけフレキシブルに対応できるのかということが大きいと思います。また弁護士業界の中ですでに使っている情報伝達・共有ソフトがあるので、既存のものと比較するための情報がほしいですね。製品自体の性能はもちろんですが、他の製品となにが違うのかを比べる事例や、弁護士事務所で実際に使っているところがあるのかどうか知りたいですね。
柏木由人さん
ディレクター/Facet Studio(建築)
少子化社会に対して一人ひとりの日本人の意識を変えることは、一瞬遠回りかなと思ったんですけど、「急がば回れ」なのだなと感じました。日本で子どもを育てながら仕事をするということに社会使命を感じる社長は多いと思いますし、青野社長のやり方はいいと思います。
僕は設計(建築家)をやっているので、一般的会社の事務作業の効率化のために使うのとは少し異なります。クリエイティブな組織のなかでkintoneがどういう風に利用することができるのか、いろいろな業界の特殊な事情にあわせてどんな風にカスタマイズできるのかっていうことを聞いてみたいですね。数あるクラウドサービスとどのような点で違うのかをもうちょっと知りたいです。