グループウェア日本国内トップベンダーのサイボウズ株式会社が、2016年9月28日に、JAMS.TV Pty Ltdらとともに合弁会社「kintone Australia Pty Ltd」(以下、kintone Australia)を設立した。
この新会社の設立に伴い、日本のサイボウズ社から青野慶久社長はじめとする執行役員がシドニーを訪問。12月12日(月)に、シドニーCBDにあるDEXUS Placeにて、講演会およびパネルディスカッションが行なわれた。
講演会に先立って行なわれた記者会見で、青野社長は「本日からサイボウズ社は、kintone Australiaとともに、オーストラリアでの活動を正式に開始させていただくこととなりました」と発表。
サイボウズ社は、2016年1月より、クラウドサービス「kintone」のオーストラリア市場進出を開始。7月に青野社長がはじめてシドニーを訪問した際に「サイボウズが一番大切にしている"多様性"をシドニーにきて痛感したと同時に、需要があるという手応えを感じた」ことが、このたびのkintone Australia設立に決め手となった模様。海外ではオーストラリアに先駆け、中国、アメリカ、東南アジアに進出しており、kintone Australiaは12カ所目、南半球初の拠点となる。
メディア各社からは質疑応答の時間いっぱいまで多くの質問が寄せられ、サイボウズ社のオーストラリア市場本格参入と今後の展開への注目度の高さがうかがえた。
記者会見の後、一般に向けてメインイベントとなる記念講演「サイボウズ社・青野慶久社長が語るクラウドビジョン2017~kintoneで変わるチームワークと創造性~」が行なわれた。青野社長より、クラウドサービスがどのようなサービス、技術、スピード感で市場規模を広げ、これからの私たちの働き方やチームのあり方がどのように変化していくのかが語られた。
元Google CEOの講演をきっかけに、クラウドとコンピューターサービスが結びついたのは2006年のこと。今でこそ日本国内トップベンダーのサイボウズ社だが、当初の業績は伸び悩んだ。青野氏はその要因を、当時のインターネット接続の環境が悪かったために、データを持ち運ぶ方が利便性が高かったことが大きかったと分析している。
それから10年経った現在は、安定、かつ高速にインターネットの常時接続が可能となったことから、「これからは常時接続のサービスが普及していき、サイボウズ社とコラボレーションするソフトも変わっていくだろう」と確信。これからのクラウド時代にもっとも需要のあるであろうグループウェアを模索した結果、「データベース」「ワークフロー」「コミュニケーション」の機能をすべて備えたkintoneをリリースするにいたった。
「これからの働き方は、チームでワークを共有するようになる。さまざまな人が力を合わせて働くために、仕事をチームのメンバーで共有しながら、誰が今なにをどこまでやっている、どんなことに困っているのかをシェアしながら働くように変わっていく」と、社内のほとんどの業務をデータベース化することができるkintoneが、これからの「チームでワークを共有する」未来のなかで大いに有効的なサービスであると説いた。
海外の大手企業を訪問するなかで、青野社長は「創造性には寛容さが必要」だと実感したという。五感をフルに開放して、創造性の高いものを行なっていく風土を作ることが大切だと学んだことから、サイボウズ社でも以下をはじめさまざまな社内改革を行なった。
その結果、サイボウズ社の離職率は下がり、業績が向上、さらには次の大きなイノベーションを生む要素にもなるなど、さまざまな良い効果があったことから、風土を作ることの大切さを説き、「このチームワークの考え方を世界中に広めて、時代を作っていきましょう」と来場者にメッセージを贈って講演を締めくくった。
まずは、サイボウズ本社執行役員営業本部長である栗山圭太氏によるkintoneの概要説明が行なわれた。誰でも簡単に作れて、スムーズな情報共有を可能にするクラウドサービスであるkintoneには、「業務アプリの作成」「データ共有」「プロセス管理」「コミュニケーション」「機能拡張」という大きく5つの機能に集約されていると説明。また、このたびkintone Australiaが設立したことにより、kintone Australiaを窓口に、本社からの全面サポートが受けられることにも触れ、拠点のある強みを強調した。
その後はサイボウズ株式会社事業支援本部長の中根弓佳氏、同営業本部長の栗山圭太氏、サイボウズ中国副総経理の増田導彦氏による一問一答のパネルディスカッション形式にて、kintoneで変わる働き方についての議論が行なわれた。
サイボウズのユニークな人事制度や休暇制度ができた背景とその効果を解説。2005年に離職率28%だったサイボウズだったが、「より多くの人がより長く働ける制度を作りたい」と多様な働き方を受け入れ、時間・場所の制約をなくし、副業を解禁、部活動や全社イベントの実施、感動課の設置などを実施。2005年には28%あった離職率が今では4%にまで低下した。「改善点はまだまだある。その改善をチームワークを支えるグループウェアの開発に活かしながら、お客さまの支援につながれば」と話した。
日本ではグループウェア部門で9年連続トップシェアベンダーとして不動の位置を確立。日本では5年間で1万7000社、月間250社が新規導入しているkintoneの人気の秘密を解説。「IT業界ではこれまでハードウェア(とくにサーバー)でビジネスが回ってきた。kintoneは機能だけでなく、日本国内でいち早くクラウドファーストをお客さまに提案したことが結果につながったと考えている」と話した。
日本とは労働環境が異なる海外でのkintone普及の成功事例として、2007年に本格進出し、現在700社がkitoneを導入している中国市場の例を紹介。海外は、日本の情報システム部門にあたる部署がなく、マネージャー陣がわからないながらも管理に当たっているのが実情であり、また、中国では情報共有することへの関心が低く、9年間苦労しながらチームワークについての素晴らしさを啓蒙してきたことを説明。その甲斐あって、現在、ユーザー3万2000人のうち、3万人が中国人スタッフで、「意識は変えられるし、クラウドサービスの登場により意識が変わってきていることも感じる」と話した。
講演会とパネルディスカッションの後は懇親会が開かれ、サイボウズ本社から集まった役員やkintone Australiaの方々と来場者のふれあう姿が印象的だった。今回のイベントを通し、規律を管理するのではなく、自立を支援するツールであるkintoneから組織運営のヒントを得た来場者が多かったようだ。
オーストラリアでは、在住の方々とのネットワークができたことから、kintone Australiaは合弁会社として設立しました。kintone Australiaは、オール・サイボウズで支援していきます。中国や東南アジアで立ち上げてきた経験をオーストラリアでも試してみたいです。まずは日系マーケットからはじめ、ローカル、他都市展開へと広げていきたいですね。私たちはオーストラリアで商売をしながら、日本にない素晴らしいカルチャーを学びたいと思っています。失敗しながら学び、それをまた日本で展開できたらと思っています。
実際にみなさんと接してみて、オーストラリア市場での手応えを感じています。kintoneは新しい仕事の進め方を作るツールだと考えています。こんなのがあったら便利だなというツールで仕事を進められたら楽しいですよね。効率も上がるし、チームワークも上がるし、なによりもみんなが楽しみながら働けるというのがおもしろい。今仕事に感じている不満を、自分の好きなように改善することを実現できる。そこには国も関係ないでしょうし、みなさんが使いこなせる手軽さがkintoneにはあります。現地のスタッフも増やしていく予定で、オーストラリアでのカスタマーサポートの体制を整えていきたいと思っています。
「kintone」にご興味のある方は、最新ニュース・イベント情報が随時更新されるfacebookグループ「kintone community in Australia」(https://www.facebook.com/groups/1113275808737191/)にお気軽にご参加ください。